工場はどこにでも建てられる?
製造工場はどこにでも建てられるわけではなく、県などによってあらかじめ定められている区域にしか建築できません。この区域に関する法律が『都市計画法』および『建築基準法』です。
工場を建てたりするときは、そこが工場を建てられる区域なのかを建築士や役所に事前に確認する必要があります。
自ら建てる場合だけではなく、すでに建っている工場を購入したりする場合もこれらの法律を遵守する必要があります。もし違反している場合は、役所から使用禁止や改修工事を求められる可能性があり、せっかく契約したにも関わらず営業できないといった事態が発生します。
市街化区域
市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のことです。この区域では、用途地域を定め、地域にふさわしい建築物の用途や大きさなどについて制限を設けています。
用途地域別の工場の建築可否は以下の通りです。たとえば、一番上の「第1種低層住居専用地域」には工場を建てることはできません。
用途地域
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工場の建築可否
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第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域 |
不可
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第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域 |
不可
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第1種住居地域
第2種住居地域 |
原則不可 ただし、条件付きで床面積50㎡以下の工場可。
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準住居地域
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原則として床面積150㎡以下の工場可。
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近隣商業地域
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原則として床面積300㎡以下の工場可。
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商業地域
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原則として床面積300㎡以下の工場可。
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準工業地域
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原則可 制限無し
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工業地区
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原則可 制限無し
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工業専用地区
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原則可 制限無し
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なお、工場を建築できる区域であっても、使用できる機械類(コンプレッサーや塗装・金属加工等の機械など)の制約については役所に確認が必要です。
市街化調整区域
市街化調整区域とは、農地や緑地の保全が優先され、原則として農業用などの例外を除いて新たに建物を建てにくい地域です。 しかし、役所に申請し、開発許可・建築許可が下りれば建てることが可能です。
例えば、愛知県では「〔法第34条第14号〕市街化調整区域の審査基準」において市街化調整区域における工場の立地基準を以下のように定めています。
開 発 審 査 会 基 準 第 1 1 号 地域振興のための工場等
地域振興を図る必要があるものとして立地する工場等のための開発行為又は建築行為若しく
は用途変更で、申請の内容が自己の業務用のもので、第1項又は第2項に該当し、かつ第3項
から第6項までに該当するものとする。
1 当該工場等は、地域振興のための工場等の立地について知事が指定する地域(昭和61年
12月8日指定)における技術先端型業種に該当する工場又は研究所とする。
2 当該工場等は、都市計画法第34条第12号に基づく条例が適用される市町村において、
所在市町村長が定めた区域内に立地するもので、次の各号に該当するものであること。
(1) 「愛知県の産業集積の推進に関する基本指針」(令和6年2月 20 日付け5産通第 459 号
愛知県経済産業局長通知)に規定する「地域における産業集積の形成及び活性化を図るた
め企業立地及び事業の生産性の向上を重点的に促進すべき業種」に該当する工場又は研究
所で、所在市町村長が地域振興を図るため必要であると認めるもの。
(2) 申請地は、都市計画法施行令第29条の9各号に掲げる区域を含む場合、想定される災
害に応じた安全上及び避難上の対策が認められるもの。
(3) 敷地面積が3,000平方メートル以上であるもの。
(4) 敷地の主たる出入口が面する道路幅員が9メートル(1ヘクタール未満にあっては6メ
ートル)以上であるもの。
3 申請地の規模はその事業計画に照らし適正なものであり、5ヘクタール未満であるこ
と。ただし、第2項の場合で開発行為が完了するまでに地区計画が定められるものにあっ
ては、20ヘクタール未満とすることができる。
4 周辺の土地利用上支障がなく、周辺の環境条件に悪影響を及ぼさないものであること。
5 所在市町村長の支障がない旨の副申書が添付されているものであること。
6 開発又は建築を行なうために他法令による許認可等が必要な場合は、その許認可等が受け
られるものであること。
【付 記】
本基準第1項に該当するもののうち、開発区域の面積又は敷地面積が3,000平方メート
ル以下のものは、開発審査会の議を経たものとみなす。
知事は、許可したものについて後日開発審査会に報告するものとする